アニメーション版・心の理論課題|発達障害心理アセスメント ソフトウエア|DIK教育出版
アニメーション版 心の理論課題

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相手の立場になるって、どんなこと?

著者インタビュー

著書:藤野博・教育学博士(東京学芸大学)


現在はどんな研究をしていますか?

発達障害の子どもたちのコミュニケーションの問題と支援の方法について研究しています。専門分野をキーワードで挙げますと臨床発達心理学、コミュニケーション障害学、特別支援教育です。

特別支援教育は、ここ数年、たいへん注目されていますよね・・・

ええ。特別支援教育の領域で仕事をしていますが、大人の論理からでなく子どもの側の視点から、つまり発達的な視点に立って子どもたちの問題を考え支援することを基本的なスタンスとしています。

特別支援教育では、テクノロジー支援など技術革新も進んでいるようですが・・・

そうですね。特にコミュニケーション支援の領域ではITの活用は有効です。しかし、アメリカやイギリスなどでは特別支援教育の様々な側面でITが活用されていますが、日本ではまだまだこれから、といった感じでしょうか。

このソフトウエアのタイトルである「心の理論」を分かりやすく説明してください。

私たちは日常生活で人と関わるときに、こんなときにはこの人はこう考えているはずだ、といった判断をしますが、それは「心」についての常識に基づいています。そういった「心」について私たちが持っている常識のことを「心の理論」といいます。そのような「心の理論」を使うことで私たちは相手の心を読み取っていると考えるわけで。

発達障害をもった子どもは「心の理論」を使うのが苦手ということ?

定型的な発達をする子どもにとって、とくに意識的に教えなくても自然に習得できる「心の理論」を発達障害、とくに自閉症スペクトラムの子どもたちは自然に獲得することが難しいということです。しかし、「心の理論」を獲得することが不可能なわけではありません。ただし、そのためには特別な支援が必要です。言葉による知識や類推を通して論理的な判断によって、自閉症スペクトラムの子どもたちも定型発達児とは違ったスタイルで「心の理論」を学ぶことができます。そのために効果的な教授方法について現在、開発や検討がなされています。

「心の理論」のテストで発達障害の有無が診断できるでしょうか?

「心の理論」のテストのみによって発達障害の診断をすることはできません。一般的に発達障害、とくに自閉症スペクトラムの子どもたちは「心の理論」課題を解くことが難しいのですが、「心の理論」課題に通過する発達障害の子もいれば、通過しない定型発達の子もいます。診断は各種の発達検査や生育歴調査、行動観察など様々な情報から総合的になされる必要があります。そしてそれは医師によってなされる行為です。本ソフトウェアのみで発達障害の診断をしてはいけないということは、利用される方に特に注意していただきたい点ですね。

「心の理論」を評価することが教育の第一歩というわけですね。

その通りです。子どもが日常生活の中で抱えているコミュニケーションや集団参加の困難の背景にある問題を把握するためのひとつの情報になるのですね。たとえば学校で先生の話を聞けないといった問題があるとします。その場合、いくつかの異なった原因が考えられます。まず先生の話の内容が理解できていないのかもしれません。LDの子どもの中にはそのような言語理解力の問題を抱えている場合があります。また、ADHDの子どものように注意力の問題によることもあります。そして自閉症スペクトラムの子どもの場合、先生がクラス全体に向けて話しかけているときに、たとえ自分の方に目を向けて話していなくとも、自分にも話しかけているということに気づいていない場合があります。そのような通常は暗黙のうちに了解される社会的常識や他者の意図の読み取りの困難の評価に「心の理論」課題は有効と考えられています。特別な教育的支援には問題の正確な実態把握が不可欠でなのです。

アニメーション版を作ろうと思ったきっかけは?

子どもたちに楽しみながら課題に取り組んでもらいたいということが一番の動機ですね。「心の理論課題」は元々は人形劇で行われていたものなのですが、コンピュータのアニメーションにしたらもっと興味をもって取り組んでもらえるだろうと考えました。それに、いつでもどこでもパソコンさえあればできるようになります。その点も便利になるかなと思いました。

このソフトウエアは、主にどんな場面で使うのでしょうか?

人とうまく関わることが難しかったり、集団生活が苦手な子どもたちがいます。そのような子どもたちの抱える困難の背景に「心の理論」が獲得できていない、あるいはうまく使えていないといった発達上の問題があることがあります。そういった問題についての実態把握(アセスメント)をする際のツールとして使ってもらえればと思います。

執筆・開発にあたり、どんな部分に苦労しましたか?

どんな子どもにも物語や設問を理解してもらえるような工夫ですね。たとえば文字を読みやすくしたり、文字が読めない子には音声で理解できるようにしたりといったことです。これもユニバーサル・デザインといってもよいと思うのですが、そのようにできる限りどの子にも使えるようなものにしよう、という点に力を注いだつもりです。

今回発売された新バージョンは期待大ですね!

初版で気になっていた点に修正を加え、新たな問題を加えました。そのような内容の面でもですが、アニメーション/ソフトウェアとしての完成度も初版よりも上がっているものと自負しています。おかげさまで初版が品切れとなり増版となったわけですが、そのように反響があったことは、製作スタッフが新バージョンを作るにあたっての大きな励みになりましたね。

今後はどんなものを開発してみたいですか?

このソフトはアセスメントを支援するツールとして開発したものであって、指導のための教材ではありません。今後は人の心の読み取り方や日常生活に必要な社会的知識を身につけるための学習用コンテンツなどを作れたらと考えています。人とのコミュニケーションのし方をコンピュータだけで教えることはできません。しかし、コンピュータを通して学習することで効果を上げられる面もいろいろとありそうです。私たちはそこに注目してゆきたいと思っています。子どもたちが楽しみながら社会生活を送る上で必要な知識や技能を自然に習得できるようなソフトが作りたいですね。


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(サリーとアン課題)

トランプのもんだい
(スマーティー課題)

ハムスターのもんだい
(ストレンジ・ストーリー課題)

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(妨害と欺き課題)

やきいものもんだい
(ジョンとメリー課題)

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